宮崎県東諸県郡に位置する綾町は、豊かな自然と有機農業を基盤とした町おこしの成功例として全国的に知られています。この町は、自然との調和を重視し、地域の魅力を最大限に活かした観光地としても人気があります。
綾町は九州山地に位置し、町の北部には国内最大級の規模を誇る「綾の照葉樹林」が広がっています。この照葉樹林は、2012年にユネスコエコパークに登録され、貴重な自然資源として保護されています。また、町の南部は宮崎平野の西端に位置しており、綾北川や綾南川(大淀川の支流)などの美しい河川も町内を流れています。
綾町の歴史は奈良時代にまで遡ります。古くは「阿陀能奈珂椰」(あだのなかや)と呼ばれていたこの地は、交通の要衝として発展しました。鎌倉時代から戦国時代には伊東氏の領地となり、江戸時代には薩摩藩の統治下に入りました。この時期、外城制度によって綾郷や高岡郷に属していた地域が、現在の綾町の礎となっています。
綾町を訪れる観光客にとって外せないスポットの一つが、照葉大吊橋です。この吊橋は、九州中央山地国定公園内にあり、周囲には豊かな自然が広がっています。吊橋からは深い渓谷や森の絶景を楽しむことができ、自然愛好者やハイカーにとっては魅力的なスポットです。
綾町の歴史を感じさせるもう一つのスポットが「綾城」です。この城は、かつて伊東氏が拠点とした城で、現在は復元され、観光名所として親しまれています。城内には歴史資料館があり、綾町の歴史や文化について学ぶことができます。
綾町は、照葉樹林の恵みを活かした手工芸品が有名です。町内には多くの工房があり、草木染め、木工、陶芸、ガラス工芸など、さまざまな伝統工芸品が作られています。特に碁盤や将棋盤に使用される高級な「榧(かや)」は、この地で作られるものが珍重されており、全国的にも高い評価を受けています。
綾町では、毎年10月に「照葉樹林マラソン」が開催されます。このマラソン大会は、自然の美しさを感じながら走ることができるとして、全国から多くのランナーが参加します。大会は地域の人々との交流もあり、町全体が一体となって盛り上がるイベントです。
11月に開催される「綾競馬」も、綾町の伝統的なイベントです。歴史あるこの競馬は、町民にとって大切な行事の一つであり、毎年多くの観光客が訪れます。この競馬は、地域の文化を感じることができるだけでなく、馬に関わる様々な催し物が行われ、楽しむことができます。
綾町は「有機農業の町」としても知られており、町を挙げて「自然生態系農業」に取り組んでいます。この取り組みは全国的にも評価されており、綾町の農産物は高級品として関東や関西の百貨店に並ぶこともあります。また、町内には「綾町農業支援センター」があり、地域の高齢農家を支援する「お助けマン部隊」が活動しており、農業の持続的な発展を支えています。
また、綾町では農業だけでなく、地元の資源を活用した手工芸品の制作も盛んです。草木染めや木竹工芸、陶芸、ガラス工芸など、地元の素材を使った製品は観光客にも人気であり、工房を訪れて職人たちの技術を見学したり、製品を購入することもできます。
綾町へは、最寄りの鉄道駅や高速道路からバスを利用してアクセスすることが可能です。宮崎市内からは宮崎交通の路線バスが運行しており、町中心部には「綾待合所」があります。車を利用する場合は、東九州自動車道の国富スマートインターチェンジや宮崎西インターチェンジが最寄りとなります。
綾町は、豊かな自然と歴史、伝統工芸、有機農業の魅力が詰まった町です。観光スポットとしても多くの見どころがあり、地域の文化や自然を体験できる場所として全国から注目されています。自然と共に暮らすライフスタイルを求める方にとっても、魅力的な移住先となっており、今後もその魅力が広がっていくことでしょう。