川南町は、宮崎県の中部、児湯郡に位置する町であり、日本三大開拓地の一つとして知られています。地理的には、東側が日向灘に面し、西側は尾鈴山地がそびえ立つ自然豊かなエリアです。歴史的には、平坦で乾燥した丘陵地帯が多いため耕作には適さない地域でしたが、明治時代以降、開拓が進められてきました。
川南町は宮崎市から北東に約35kmの位置にあり、河成段丘が海岸付近まで広がる美しい風景を楽しむことができます。町の中心部を平田川が流れ、北端には名貫川が流れています。この「川南」という町名は、名貫川の南に位置していることに由来しています。
町の年間降水量は約2,400mmと豊富で、日照時間も年間約2,100時間と十分な環境に恵まれています。しかし、降水量の大部分は梅雨や台風の季節に集中するため、春や夏は比較的乾燥しています。特に、町内の丘陵地は乾燥した原野が広がり、第二次世界大戦後の本格的な開拓まで、長年未開発のままでした。
川南町の丘陵地は、江戸時代から讃岐国などの住民を受け入れて小規模な新田開発が行われていました。明治時代には、士族や農民が集まり、大規模な農場開発が進められましたが、用水路の不足や厳しい気候条件により多くの困難が伴いました。
本格的な開拓が始まったのは、戦後のことであり、特に1949年には昭和天皇の戦後巡幸が行われたことで全国から注目を浴びました。その後、全国各地から移住者が集まり、「川南合衆国」とも呼ばれるほど、人口の増加と多様な文化が育まれました。現在では、川南町は宮崎県の畜産業の中心地として発展しています。
川南町は、戦時中には軍用地としても利用されていました。特に、1941年には陸軍の空挺落下傘部隊が設置され、その練習場が川南町内に作られました。この部隊の歴史を記念する「川南護国神社」には、毎年11月に戦没者を慰霊する祭典が行われています。現在でも、当時の給水塔や軍事施設の跡が町内に残されており、歴史を感じることができます。
川南町は、広大な台地を活かした畜産業が盛んな町であり、特に豚や肉牛の生産が主力です。2006年のデータによると、畜産の生産額は約149.6億円に達しており、農業粗生産額の約7割を占めています。特に豚の生産額は73.3億円と、全国第6位に位置しています。これにより、川南町は「畜産の町」としての地位を確立しています。
また、町内には大規模な工業団地があり、特に「塩付工業団地」は県内でも最大の面積を誇ります。この工業団地には、宮崎県農協果汁(サンA)や、年間売上が1000億円を超える児湯食鳥グループなど、県内でも有数の企業が拠点を置いています。これにより、川南町は企業城下町としても知られるようになりました。
川南町の中心地域は「トロントロン」と呼ばれており、その名の由来にはいくつかの説があります。一つは、西南戦争の際に西郷隆盛が「トロントロン」とぬかるんだ地面を表現したという説。もう一つは、湧き水の音が「トロントロン」と聞こえたという説です。このユニークな名前の由来を知ると、町の歴史に対する興味が湧いてくるでしょう。
前述したように、川南町には日本陸軍の空挺落下傘部隊の歴史が残されています。川南護国神社には、この部隊の戦没者が祀られており、毎年11月には慰霊祭が行われています。また、当時の給水塔や軍事施設跡も残っており、これらは戦争の歴史を今に伝える重要な文化財となっています。
川南町は豊かな自然に恵まれており、四季折々の風景が楽しめます。特に、畑作が盛んなこの地域では、農業体験ができる施設も多く、観光客にとっても魅力的なスポットです。地元の特産品としては、宮崎県産の新鮮な野菜や果物、そして美味しい豚肉などが人気です。
川南町は、その歴史的な背景と美しい自然環境、そして畜産業を中心とした豊かな経済活動が融合する町です。開拓の歴史や戦争の記憶を今に伝える遺産も多く、訪れる人々に多くの学びと感動を与えてくれます。川南町に訪れる際には、ぜひその魅力を存分に感じてみてください。