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西都原古墳群

(さいとばる こふんぐん)

西都原古墳群は、宮崎県西都市の三宅、童子丸、右松にまたがる広大な古墳群で、国の特別史跡に指定されています。この古墳群は、日本国内でも最大級の規模を誇り、その歴史的価値から国内外で注目を集めています。

概要

西都原古墳群は、標高約70メートルの台地上に広がる古墳群で、4世紀初頭から7世紀前半にかけて築造されたと推定されています。現存する古墳は319基に及び、その中には前方後円墳31基、方墳2基、円墳286基が含まれています。さらに、横穴墓が10基、南九州特有の地下式横穴墓が12基確認されています。

この地域では、1912年から1917年にかけて、日本で初めて本格的な学術調査が行われました。調査は複数回に分けて実施され、その成果は後の考古学研究に大きな影響を与えました。1914年には出土品を収蔵するために宮崎県立史跡研究所が設立され、後に西都市立博物館として再編されました。現在では再び県立の西都原考古博物館として運営されており、出土品の保管と展示が行われています。

歴史的背景と特別史跡指定

西都原古墳群は、1934年に国の史跡に指定され、1952年には国の特別史跡に指定されました。その後、1966年から1968年にかけて風土記の丘第1号として整備が進められ、現在では日本国内外から多くの観光客や研究者が訪れる重要な文化財となっています。

古墳群の分布と分類

西都原古墳群は、その地形的特性から、西都原台地上と市街地との間に位置する中間台地の二つの地域に大きく区分されます。さらに、これらの地域は細かく11の集団、または10から13の支群に分けられます。

西都原台地上の主要な集団

第一集団(第1-A支群・第1-B支群)

この集団は台地の東南部に位置し、西都原古墳群内で最大の規模を持つ地域です。前方後円墳7基を含む計91基の古墳が分布しており、代表的な古墳には「姫塚(202号墳)」があります。

第二集団(第2-A支群)

この集団は台地の東側縁辺部に一列に形成され、前方後円墳10基を含む計36基の古墳が分布しています。

第三集団(第2-B支群・第3-A支群・第3-B支群)

台地の北部に形成されたこの集団には、前方後円墳1基を含む計86基の古墳が存在します。

第四集団(丸山支群)

丸山丘陵の東側裾部に位置し、「男狭穂塚古墳」と「女狭穂塚古墳」、およびそれらの陪塚(ばいちょう)が含まれます。

第五集団(第1-B支群)

台地のほぼ中央に位置し、古墳群内で唯一の横穴式石室墳「鬼の窟古墳(206号墳)」があります。また、1995年の調査で横穴墓(酒元ノ上横穴墓群)も確認されました。

第六集団(寺原第1支群)

台地の西側、寺原丘陵一帯に位置し、前方後円墳3基を含む計16基の古墳が築かれています。

第七集団(寺原第2支群)

寺原集落地域内に位置し、前方後円墳1基を含む計12基の古墳が存在しますが、この前方後円墳は道路によって切断されています。

中間台地上の主要な集団

第八集団(堂ヶ島支群)

堂ヶ島微高地および童子丸台地上に分布する円墳群です。

第九集団(鷲田支群)

宮崎県立妻高等学校および日向国分寺のある諏訪地域に分布し、前方後円墳2基を含む計20基の古墳が存在します。

第十集団(尾筋支群)

三宅集落丘陵の上および下尾筋地域に分布する前方後円墳5基を含む計18基の古墳群です。

第十一集団(鳥子支群)

三宅丘陵南部の沖積層である鳥子地域に位置し、前方後円墳1基を含む計4基の古墳が築かれています。

西都原台地上の主な古墳

男狭穂塚古墳・女狭穂塚古墳

男狭穂塚(おさほづか)は、全長175メートルを誇る日本最大の帆立貝形古墳です。一方、女狭穂塚(めさほづか)は、全長180メートルで九州最大の前方後円墳となっています。両者は宮内庁によって陵墓参考地として管理されており、特別史跡の指定範囲には含まれていません。

姫塚(202号墳)

姫塚は「第1集団(第1-B支群)」の西端に位置する前方後円墳で、墳長50.2メートル、前方部幅30.8メートル、後円部径28.4メートルを測ります。その美しい形状から「姫塚」と呼ばれています。大正時代に発掘され、直刀や須恵器などの貴重な副葬品が出土しました。

鬼の窟古墳(206号墳)

鬼の窟古墳(おにのいわやこふん)は、西都原古墳群内で唯一、埋葬施設に横穴式石室を採用した古墳です。その名の由来は、鬼が一夜で造り上げたという伝説から来ています。近年、石室崩壊の危機にあったため修復作業が行われ、その際に発掘調査も実施されました。石室周囲には土塁が巡らされており、これは中華人民共和国や朝鮮半島でよく見られる形式ですが、日本国内では石舞台古墳が類似しています。

その他の主な古墳

西都原古墳群には、他にも13号墳、35号墳、56号墳、72号墳、81号墳、100号墳、169号墳(飯盛塚)、170号墳(雑掌塚)など、多くの古墳が存在しています。

169号墳の埴輪

169号墳からは、衝角付冑形埴輪(しょうかくつきかぶとがたはにわ)が出土しており、これは全国的にも貴重な発見とされています。

現存する横穴墓群

南九州特有の地下式横穴墓が12基確認されており、その中でも「寺原第2支群」に位置する横穴墓群は、特に保存状態が良好で、埋葬文化の研究において重要な位置を占めています。

その他の重要な出土品

その他、金銅装の馬具や鉄剣、鉄鏃、玉類なども発見されており、当時の製作技術や文化の高さを示す貴重な資料となっています。

アクセスと見学情報

西都原古墳群は、宮崎市内から車で約1時間の距離にあり、観光バスなどの利用も可能です。現地には駐車場や休憩所が整備されており、自由に散策することができます。また、西都原考古博物館では、古墳群の歴史や出土品に関する展示が行われており、ガイドツアーも提供されています。

Information

名称
西都原古墳群
(さいとばる こふんぐん)

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