旧吉松家住宅は、宮崎県串間市に位置する歴史的建築物です。1919年(大正8年)に主屋などが上棟され、2008年(平成20年)12月2日に重要文化財に指定されました。屋敷全体の構成がすべて現存している点が高く評価されています。
吉松氏は戦国末期に秋月種長が福岡から高鍋藩に移封された際に付き従ったとされ、幕末には日向串間の庄屋となりました。吉松卓蔵(1838年-1920年)、吉松忠敬(卓蔵の息子、1865年-1937年)、吉松忠俊(忠敬の息子、1885年-1941年)の3代が材木商などで財を成し、地域の発展に寄与しました。
吉松家の家紋は「輪違い」で、地域における吉松家の象徴となっています。
旧吉松家住宅は座敷部、居室部、大広間部、離れ部、台所部、奥座敷部から成る主屋を中心に、内蔵、物置、外風呂、外蔵が配置されています。これらは1919年に上棟され、その後も吉松家の邸宅として使用されていましたが、1985年(昭和60年)頃から空家となりました。2003年には串間市が吉松家から購入し、2004年には登録有形文化財に登録。2007年4月から資料館として公開され、2008年に重要文化財に指定されました。
旧吉松家住宅は木造一部2階建ての大規模な近代和風建築で、敷地面積は950坪です。建物全体には洗練された意匠が凝らされ、特に主屋の廊下の窓ガラスは職人の手仕事による板ガラスが使われています。内装の黒壁(砂鉄)と外壁の白壁(漆喰)の対照が美しい空間を作り出しています。
廊下の梁には長さ10メートルを超える一本材が用いられ、土間には炊事場や農機具が展示されています。近代和風建築でありながら、応接間の窓枠や照明には洋風の要素も取り入れられています。建物内では工芸品の展示会や書道展、写真展が開催され、毎年3月には「吉松邸ひなまつり」が行われます。
玄関の板戸絵は1921年から1922年にかけて、鹿児島在住の画家・今井玉芳によって描かれました。愛宕山の竹林をモチーフにした春の竹林の風景が三方全面に描かれ、その中には雀の遊ぶ姿が見られます。
以下の建造物5棟および土地が「旧吉松家住宅」として国の重要文化財に指定されています。
土地(宅地、山林および雑種地)2,874.10平方メートルには、表門、愛宕門、井戸、石段、石塀および石垣が含まれています。
開館時間: 9時 - 17時
休館日: 毎週火曜日、祝日の翌日、年末年始
入場料: 無料
アクセス: JR日南線串間駅より徒歩5分
旧吉松家住宅は「旧吉松家住宅を中心とした大正ロマンのまちづくり~レトロ路面電車でまちをつなぐ~」の取り組みで、平成30年度手づくり郷土賞を受賞しています。