日之影町は、宮崎県北部に位置する自然豊かな町で、西臼杵郡に属しています。町全体の90%以上が山林で、五ヶ瀬川や日之影川を中心に美しいV字渓谷が広がり、自然と歴史が調和した風景が訪れる人々を魅了します。本稿では、日之影町の観光名所や歴史、文化に焦点を当て、見どころをご紹介します。
日之影町は九州山地に位置し、東西約9km、南北約30kmという広大なエリアを持つ町です。町の中央を流れる五ヶ瀬川は、数多くの谷川を受け入れ、深いV字谷を形成しています。切り立った崖や渓谷の美しさは、自然愛好家にとって魅力的な観光スポットです。また、傾山や五葉山、釣鐘山、真弓岳などの山々が日之影町の地平線を彩り、ハイキングや登山にも最適です。
町内には、祖母傾国定公園が広がり、豊かな自然の中で心身を癒すことができる「森林セラピー基地」が整備されています。森林セラピーとは、森林の中でのウォーキングや自然体験を通じてリラックス効果を得るアクティビティです。町内には「癒しの森の案内人」がいて、ガイド付きで自然を満喫することができるプログラムが用意されています。近年では「高千穂郷椎葉山地域」が世界農業遺産に認定され、エコツーリズムの拠点としても注目を集めています。
日之影町の歴史は、初代天皇・神武天皇の兄である三毛入野命(みけいりののみこと)が「日の影」が差し込む場所として名をつけたことに由来しています。町には、約2万年前の旧石器時代からの遺跡である出羽(いずるは)洞穴が残っており、宮崎県最古の歴史を持つ場所でもあります。また、飛鳥時代から奈良時代にかけては、日向国臼杵郡の一部として、平安時代には高千穂荘の統治内に含まれていました。
1951年に日之影町は正式に町制施行され、1956年には周辺の村を編入しました。2015年には高千穂郷・椎葉山地域が国際連合食糧農業機関(FAO)から世界農業遺産に認定され、日之影町はさらに注目を集めるようになりました。2021年には新しい町役場が完成し、より近代的な行政サービスが提供されています。
日之影町の主要な産業は、農林業です。特に柚子、栗、きんかんなどの果樹や、その加工品が有名です。椎茸や伝統的な釜炒り茶も、町の重要な特産品として知られています。また、竹細工やわら細工といった手工芸品も発展しており、山間地の生活に根ざした文化が受け継がれています。竹細工は、日之影町で長い歴史を持ち、故・廣島一夫氏の作品はスミソニアン博物館にまで展示されるほど高く評価されています。
英国館は、昭和初期に英国人技師ハンス・ハンターによって建てられた建物で、日本建築と洋風建築が融合した独特のスタイルが特徴です。旧見立鉱山のクラブハウスとして使用されていたこの建物は、現在は国の登録有形文化財として保存されています。内部には当時の鉱山生活の様子や英国文化に触れる展示があり、歴史好きには必見のスポットです。
天翔大橋は、日之影町にある日本最大のコンクリートアーチ橋です。この橋は、ふるさと農道として建設され、見事なアーチ形状が印象的です。橋の上からは、日之影渓谷の絶景が一望でき、ドライブや観光客にとっての人気スポットとなっています。
日之影温泉駅は、温泉施設が併設された駅です。鉄道の駅としての機能を持ちながら、地元の人々や観光客が気軽に立ち寄り、リラックスできる場所となっています。湯治を楽しみながら、地元の風景を楽しむことができるため、多くの温泉愛好家に親しまれています。
石垣の村は、村全体が石垣で囲まれた戸川集落を指します。最も古い石垣は嘉永〜安政年間に築かれ、歴史的価値が高く、訪れる人々に感動を与えます。この地域は「日本棚田百選」にも指定されており、田畑と石垣が織り成す美しい景観は、まさに日本の原風景と言えます。
見立渓谷は、自然豊かな日之影町を象徴する渓谷です。川の流れや深い緑が美しく、四季折々の風景が訪れる者を魅了します。渓谷沿いには遊歩道が整備されており、ハイキングやトレッキングを楽しむことができます。
日之影町には、高さ100メートルを超える橋が215基あり、その中でも青雲橋、龍天橋、天翔大橋が「三大橋」として知られています。これらの橋は、壮大な景観を楽しめるだけでなく、日之影町の観光において重要なランドマークです。
青雲橋は、国道218号にかかる巨大な橋で、熊本方面からアクセスする際に目にする日之影町の象徴的な存在です。橋の西側には「道の駅青雲橋」があり、観光情報の入手や休憩ができる便利な施設です。
龍天橋は、緑資源幹線林道宇目須木線にかかる橋です。この橋は、その独特な設計と高さから、日之影町の美しい自然景観と調和しています。
天翔大橋は、日之影町松の木地区にあるふるさと農道の橋で、見立渓谷を見下ろすように架かっています。その雄大なアーチ構造は、建築技術の粋を集めたもので、橋の上からは絶景を楽しむことができます。
日之影町は、アウトドア愛好者にとっても魅力的な場所です。町内には多くのキャンプ場やロッジがあり、自然と触れ合いながらのんびりとした時間を過ごすことができます。
日之影キャンプ村は、日之影町の自然を満喫できる人気のキャンプ場です。テントサイトだけでなく、設備の整ったバンガローやロッジもあり、初心者から上級者まで幅広いキャンプ体験を楽しむことができます。
丹助岳キャンプ場は、丹助岳のふもとに位置し、雄大な山々に囲まれたロケーションが魅力です。ここでは、澄んだ空気の中でリフレッシュできるとともに、星空観察も楽しめます。
リフレッシュハウス出羽(いずるは)は、日之影町の自然と温泉を楽しむことができる宿泊施設です。のんびりとした時間を過ごすのにぴったりな場所で、温泉や森林浴を楽しむことができます。
この他にも、かもしかの森ケビン村や鹿川地区交流センター「つりがね」、TR列車の宿など、ユニークなアウトドア施設が点在しており、訪れる人々に多様な宿泊体験を提供しています。
日之影町には、古くから伝わる伝統芸能や祭りが多く、地元の文化が色濃く残されています。これらの伝統は地域住民によって守られ、毎年の祭りやイベントで披露されています。
大人(おおひと)歌舞伎は、宮崎県指定の無形民俗文化財に指定されている農村歌舞伎です。毎年10月に大人神社の例大祭で上演され、地元住民の手によって伝統が守られています。
深角団七踊りは、宮崎県指定無形民俗文化財であり、毎年10月に保存会によって祭りが開催されます。この踊りは、地域の伝統的な文化を感じられる貴重な機会となっています。
日之影神楽は、隣町の高千穂の夜神楽を源流としながらも、独自の舞を発展させた神楽です。毎年11月から2月にかけて、町内各集落で奉納される神楽は、地域の信仰心と伝統が深く息づいています。