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槵觸神社

(くしふる じんじゃ)

槵觸神社は、宮崎県西臼杵郡高千穂町に鎮座する歴史ある神社であり、古くから地域の信仰の中心として崇められてきました。その名前の由来や歴史は神話時代に遡り、特に天孫降臨伝説に深く関わっています。社格はかつて県社であり、現在は神社本庁に属しています。本記事では、槵觸神社の歴史、祭神、周辺の見所、文化財について詳しく解説します。

社名の由来と変遷

槵觸神社の名前は古くから「櫛ひ大明神」や「くしふる大明神」として知られていました。さらに「二上神社」や「高智保皇神社」とも呼ばれた時期があり、明治4年(1871年)には正式に「二上神社」という社名が使われましたが、43年後には「槵觸神社」に戻されました。特に「槵」という字は難解であるため、平仮名で「くしふる神社」と書かれることも多く、また「觸」は「触」の旧字体であるため、「槵触神社」と表記されることもあります。

祭神と神話

槵觸神社は、元々槵觸山を神体山として祀っており、本来は本殿を持たない神社でしたが、現在では本殿を構え、天津日子番邇々杵命(あまつひこほのににぎのみこと)を主祭神としています。この神は、日本神話における天孫降臨の中心的人物であり、天照大神の命を受けて地上に降り立った神として知られています。

また、相殿には天児屋根命・布都恕志命・布刀玉命・建御雷命が祀られています。これらの神々もまた、日本の神話に深く関わっており、特に武神としての性格が強く、戦いや勝利を象徴する神々です。

槵觸神社の歴史

創祀の経緯

槵觸神社の創祀については明確な記録は残っていませんが、槵觸山の中腹に鎮座し、山自体が神体山として崇められてきたことから、長らく本殿を持たない神社でした。この山は、天孫降臨の聖地として伝えられており、『日本書紀』や『古事記』に登場する「高千穂の槵觸之峯(くじふるのたけ)」がこの山であるとされています。

また、槵觸神社が『延喜式神名帳』に記載されていないことから、国史に見える「高智保神(高智保皇神)」であるかは議論の対象となっていますが、古来から霧島神社とともに天孫降臨の地として重要視されてきました。

荒廃と再建

槵觸神社は、古来より高千穂神社との密接な関係を持ち、高千穂神社の春祭りに対して秋祭りを行っていました。しかし、三田井氏の滅亡後、社殿は荒廃しました。元禄7年(1694年)に高千穂神社宮司が延岡藩主三浦明敬の援助を受けて社殿を再建し、高千穂18郷の郷民の協力のもと、初めて本殿が建立されました。この再建以降、藩主内藤氏も祭礼に代参を派遣し、神事料を奉納するなど、神社の維持に協力しました。

槵觸神社の文化財

槵觸神社の本殿は三間社流造銅板葺で、棟には千木や鰹木が置かれています。この本殿は平成2年(1990年)に高千穂町の有形文化財に指定されており、地域の歴史的価値を示す重要な建造物です。

神事と祭礼

例祭と神事相撲

槵觸神社の例祭は毎年10月16日に行われます。この祭りは、豊作への感謝を表す秋祭りであり、高千穂神社の春の祭りと対を成しています。例祭では、神事相撲が奉納されることが特徴で、かつては九州一円から力士が集まり、高千穂方と来訪方に分かれて技を競いました。相撲の結果は、来年の農作物の豊凶を占う年占の意味合いを持っていました。

周辺の見所

槵觸神社の周辺には、天孫降臨にまつわる多くの伝説的な史跡があります。以下にその代表的なものを紹介します。

天真名井(あまのまない)

槵觸山の山麓には「天真名井」と呼ばれる湧水があります。これは天孫降臨の際に、当地に水がなかったため、天村雲命が高天原から持ち帰った神聖な水と伝えられています。この井戸は「三田井」の地名の由来となった3つの井戸の1つであり、今でも湧出する井水は不増不減の神水として信仰されています。春秋の例祭では、この井戸が神輿の旅所として使われ、神楽が奉納されます。

高天原遥拝所

槵觸神社の境内には、高天原を遥拝するための場所が設けられています。これは、天孫降臨後、八百万の神々が集まり、高天原を遥拝したと伝えられる場所であり、神聖なスポットとして多くの参拝者が訪れます。

四皇子峰(しおうじがみね)

四皇子峰は、神武天皇とその皇兄弟である五瀬命、稲飯命、三毛入野命の4柱が誕生した地とされています。また、神功皇后が三韓征伐の際に、7日7夜の戦捷祈願を行った場所でもあると伝えられています。

夜泣き石

神代川に臨む「夜泣き石」は、古くから子育ての神聖な石として信仰されてきました。この石に触れると、乳幼児の夜泣きが止まるとされ、かつては子供を抱いた若嫁の姿がよく見られました。夜泣き石には、木花開耶姫の難産に由来する伝承や、豊玉姫と玉依姫の出産にまつわる伝説があります。

アクセスと観光情報

槵觸神社へのアクセスは、車を利用するのが便利です。宮崎県高千穂町の中心部からは車で約15分程度の距離にあり、周辺には高千穂峡や高千穂神社など、他にも観光スポットが点在しています。また、高千穂の美しい自然景観を楽しみながらのドライブもおすすめです。

まとめ

槵觸神社は、天孫降臨伝説に深く関わる神聖な場所であり、その歴史や神話は日本の文化的遺産の一部を成しています。神社周辺には、古代の伝説や神事にまつわる数多くの見所があり、訪れる人々に深い感銘を与えています。槵觸神社を訪れる際には、歴史や伝承に触れながら、その神聖な雰囲気を体感することができるでしょう。

Information

名称
槵觸神社
(くしふる じんじゃ)

高千穂・延岡・日向

宮崎県