宮崎県 » 高千穂・延岡・日向

大崩山

(おおくえやま)

大崩山は、宮崎県延岡市北西部に位置し、九州山地に属する大崩山群の主峰です。この山は、その険しい地形と壮大な自然環境から、登山者にとって特に魅力的な場所となっています。

標高と特徴

大崩山の標高は約1,644メートルで、その東側斜面には風化した花崗岩が露出し、まるで崩れたような景観を作り出しています。このため「大崩」という名前が付けられました。山頂には一等三角点が設置されていますが、灌木が茂っており、眺望はあまり良くありません。しかし、少し下った石塚付近からは九州の名だたる山々を望むことができます。由布岳、九重山、阿蘇山、雲仙岳、祖母山、傾山、市房山、霧島山などの雄大な山々を一望することができ、登山者にとって感動的な景色が広がります。

自然の宝庫

大崩山周辺には、多くの景勝地が存在します。北東山麓には美しい祝子川渓谷、南西山麓には鹿川渓谷があり、それぞれの渓谷が四季折々の美しい風景を提供します。これらの自然景観は、登山者だけでなくハイカーや観光客にも人気があります。

大崩山の歴史

登山の歴史

大崩山は、西南戦争の際に西郷隆盛が政府軍の包囲を突破し、鹿児島に退却するために通った場所としても知られています。近くの鹿川越を利用して山を越えましたが、山岳信仰の対象にはならなかったため、登山者が増えるのは比較的最近のことです。大正時代以前には、登山者はほとんどおらず、その険しい地形からも人々にあまり登られていませんでした。しかし、1965年(昭和30年)に祖母山や傾山とともに「祖母傾国定公園」に指定されたことで、登山者やハイカーの数が増加しました。現在では年間約2万人がこの山を訪れています。1992年(平成4年)には全国高等学校総合体育大会の登山競技大会の舞台にもなり、その名はさらに広まりました。

登山コース

大崩山には4つの主要な登山コースが知られていますが、その多くの箇所は非常に危険です。ロープを使って渡る場所や、はしごを登る急峻なエリアが連続しており、熟練した登山者であっても遭難や滑落のリスクがあります。このため、初心者には不向きな山と言われています。初心者が登る場合は、必ず経験豊富な登山者と同行することが推奨されています。

大崩山の自然環境

豊かな森林と動物たち

大崩山の山麓には、モミ、ツガ、ブナ、カエデなどの原生林が広がっており、手つかずの自然が保たれています。これらの森林は四季折々に異なる表情を見せ、特に秋には紅葉が美しく、訪れる人々を魅了します。また、この地域にはニホンカモシカも生息しており、運が良ければその姿を目にすることもできます。

大崩山の地質

ホルンフェルスと花崗岩の環状岩脈

大崩山の山頂付近はホルンフェルスと呼ばれる硬い変成岩から成り、その下には花崗岩の大規模なドーム(バソリス)が広がっています。このホルンフェルスは、侵食に強く、長い年月をかけて他の地層が削り取られる中で取り残され、現在の山の形を形成しています。

大崩山の形成過程

大崩山は約1,400万年前に発生した火山活動によって形成されました。この地域では、祖母山と傾山の付近で火山活動があり、カルデラ(火山性のくぼ地)が形成されました。その後、カルデラの南東部に環状の亀裂が生じ、大規模な火砕流の噴出を伴う大噴火が発生しました。これにより、大崩山カルデラが形成され、地下から上昇したマグマが冷却されて花崗岩の環状岩脈ができました。

この花崗岩の環状岩脈は、東西37キロメートル、南北32キロメートルに及び、大崩山の周囲を取り囲んでいます。この環状岩脈に沿って、可愛岳、行縢山、茶臼山、比叡山、矢筈岳、丹助岳などが連なり、これらの山々も大崩山と同じ地質的な起源を持っています。

大崩山の展望所と景観

袖ダキ展望所

大崩山には、いくつかの展望所がありますが、その中でも特に人気があるのが「袖ダキ展望所」です。この展望所からは、小積ダキ、大崩山山頂、下ワク塚の岩峰を望むことができ、壮大な景観を楽しむことができます。訪れる登山者は、その圧倒的な自然の美しさに心を打たれることでしょう。

Information

名称
大崩山
(おおくえやま)

高千穂・延岡・日向

宮崎県