椎葉厳島神社は、宮崎県東臼杵郡椎葉村に鎮座する歴史ある神社です。この神社は、源平の歴史的な背景や、平家の遺臣と源氏方の武将の悲恋物語で知られる「鶴富屋敷」の近くに位置しています。神社は、下福良集落の中央にある小高い丘の上に建ち、地域のシンボルとして崇敬されています。旧社格は村社であり、村の中心部を見渡すことができる景観も魅力のひとつです。
祭神
椎葉厳島神社では、市杵島姫命(いちきしまひめのみこと)と素盞男命(すさのおのみこと)が祀られています。市杵島姫命は、厳島神社の主神として知られており、水や航海の守護神としても崇められています。
由緒
この神社の創建には、源平合戦の余波が深く関係しています。壇ノ浦の戦い(1185年)で敗北した平家の遺臣たちが山間部である椎葉に逃れ、この地に隠れ住んでいたと伝えられています。その後、源氏方の武将である那須大八郎宗久が平氏残党の追討を命じられて当地に下りましたが、宗久は平家の人々の誠実さを感じ取り、追討を断念しました。そして、平家が崇敬していた安芸の厳島神社の守護神を勧請し、椎葉厳島神社が創建されたのです。
椎葉厳島神社の歴史には、源氏と平家の悲恋物語が深く関わっています。那須大八郎宗久は、平清盛の末裔である鶴富姫と恋に落ち、その結果、平家の残党を許すことになりました。このエピソードから、椎葉厳島神社は恋愛成就の神社としても知られるようになりました。特に「源平おまもり」は、恋愛成就を願う参拝者に人気があります。
また、この神社は恋愛成就だけでなく、交通安全や厄除けといった御利益もあるとされています。地域の人々からは、村の氏神として大切に崇められています。
椎葉厳島神社の境内には、鶴富姫が使用したとされる「鶴富姫化粧の水」や、那須大八郎宗久の「源氏の陣屋敷跡」など、歴史を感じさせる場所が数多く残されています。これらのスポットは、神社参拝の際にぜひ訪れていただきたい場所です。
鶴富姫化粧の水
この湧き水は、鶴富姫が化粧水として使っていたと伝えられています。その清らかな水は、恋愛や美を願う参拝者たちにとって特別な存在となっています。
源氏の陣屋敷跡
那須大八郎宗久が滞在したとされるこの陣屋跡は、神社の歴史を物語る重要な場所です。訪れる人々に、源平時代の緊張感と、その後の和解の象徴を感じさせます。
椎葉厳島神社では、11月の第1日曜日に秋季例祭が行われます。この祭りは、神社の重要な年中行事として地域の人々に親しまれています。さらに、12月の第2土曜日から日曜日にかけて行われる「冬祭り夜神楽祭」では、国の重要無形民俗文化財に指定されている「上椎葉神楽」が奉納されます。これは、夜通し続けられる伝統的な神楽で、椎葉村の人々だけでなく、多くの観光客も訪れる人気の行事です。
椎葉厳島神社の現在の社殿は、平成8年に氏子崇敬者の協力によって本殿、幣殿、拝殿が改修されました。また、社務所や手水舎、裏鳥居も新しく建てられ、平成10年には参道も改修されています。しかし、平成17年9月6日の土石流によって表鳥居が喪失してしまいましたが、平成20年6月に再建され、現在に至ります。
椎葉厳島神社のすぐ近くには、那須家住宅(鶴富屋敷)があり、これは那須大八郎宗久と鶴富姫の住居であった場所です。この屋敷は、二人の悲恋物語の舞台として有名で、国の重要文化財にも指定されています。訪れる人々は、この屋敷を通じて、源平時代のロマンと哀愁を感じることができます。
椎葉村自体も、豊かな自然と歴史的な遺産に囲まれた魅力的な場所です。特に秋には紅葉が美しく、訪れる人々を魅了します。また、椎葉村には多くの温泉や自然散策コースがあり、ゆったりとした時間を過ごすことができる観光スポットが点在しています。
椎葉厳島神社は、歴史と伝説、そして自然が織りなす魅力的な観光地です。源氏と平家の悲恋物語に触れながら、厳かな雰囲気の中で恋愛成就や厄除けの祈願をすることができる神社として、多くの参拝者に親しまれています。また、境内や周辺には見どころが多く、那須家住宅や鶴富姫化粧の水など、歴史の息吹を感じられる場所が点在しています。季節ごとの祭りや神楽も見逃せないイベントであり、椎葉村全体を楽しむ観光プランの一環として訪れる価値が高い場所です。