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日向椎葉湖

(ひゅうがしいばこ)

日向椎葉湖は、九州中央山地国定公園に指定された美しい人造湖です。この湖は上椎葉ダムによって形成され、その名前は著名な小説家、吉川英治によって名付けられました。吉川英治は『三国志』や『新・平家物語』など数々の歴史文学作品で知られており、椎葉村との縁から「日向椎葉湖」と命名された経緯があります。

湖畔には、吉川英治が揮毫した「日向椎葉湖」の石碑が立ち、その背後には「ダム湖百選」に選ばれた証であるプレートもあります。この湖は、椎葉村が古くから伝わる平家落人伝説で有名な地域であり、特に「鶴富姫伝説」は多くの観光客にとって興味深い歴史の一部です。

鶴富姫伝説と日向椎葉湖

鶴富姫伝説は、鎌倉幕府の命を受けて椎葉村に落人狩りに来た那須大八郎が、平家の末裔である鶴富姫と恋に落ち、幸せな生活を送っていたものの、最終的に幕府の命によって二人は別れ別れになってしまうという悲恋の物語です。吉川英治が『新・平家物語』を執筆した際、椎葉村を訪れ、この伝説に触れたことで湖の命名が行われたのです。

日向椎葉湖の美しい風景

日向椎葉湖は、春の新緑や秋の紅葉が特に美しい場所としても知られています。湖周辺は自然が豊かで、四季折々の風景が楽しめます。また、毎年7月下旬には「椎葉夏祭り」が開催され、湖畔での花火大会が見物です。2000発の花火が打ち上げられ、湖面に映し出される光景は圧巻です。

釣りとアウトドアの魅力

日向椎葉湖は釣り愛好者にとっても人気のスポットです。湖ではニジマス、ヘラブナ、コイなどが釣れますが、特にヤマメの大物が釣れることでも有名です。湖畔でのアウトドアアクティビティを楽しむ人々にとって、湖とその周辺は絶好のリラクゼーションの場所となっています。

周辺観光スポット

日向椎葉湖の周辺には、鶴富姫伝説に関連する「鶴富屋敷」(那須家住宅・国の重要文化財)があります。この屋敷は、歴史ファンや文化財に興味のある人々にとって必見の場所です。また、近隣には高千穂峡や阿蘇山、祖母山などの観光スポットもあり、これらと組み合わせて日向椎葉湖を訪れる観光客も多くいます。

上椎葉ダムの歴史と役割

上椎葉ダムは、宮崎県東臼杵郡椎葉村に位置し、九州電力が管理する発電用ダムです。このダムは1955年に完成し、日本初の100メートル級のアーチ式コンクリートダムとして知られています。高さ111.0メートルのこのダムは、耳川水系の水力発電所群の中核を担っており、九州地方の電力供給に大きく貢献しています。

ダムによって形成された人造湖、日向椎葉湖は2005年に「ダム湖百選」に選ばれました。ダムの展望台からは、美しい湖と周囲の自然が一望できるため、多くの観光客が訪れる人気のビュースポットとなっています。

土木遺産としての価値

上椎葉ダムは、2019年に「土木学会選奨土木遺産」に選ばれました。これは、大規模なアーチ式ダムとして日本の土木技術に大きな影響を与え、戦後の九州地方の電力需要を支える重要な構造物であることが評価されたためです。このダムは、日本のダム技術の進歩を象徴する存在として、その歴史的価値が認められています。

ダム建設における歴史的背景

上椎葉ダムの建設は、第二次世界大戦後の復興期において、九州地方の電力需要に応えるために計画されました。1938年に完成した塚原ダムが先駆けとなり、上椎葉ダムの建設が進められました。当初は重力式コンクリートダムが計画されていましたが、地質的条件を考慮し、最終的にアーチ式ダムが選ばれました。

ダムの建設に伴い、椎葉村では73戸の住民が移転を余儀なくされましたが、補償交渉が妥結し、1950年から本格的な工事が開始されました。このダムの完成により、耳川水系の水力発電能力が大幅に向上し、北九州工業地帯への電力供給が強化されました。

観光スポットとしての上椎葉ダム

上椎葉ダムは、観光スポットとしても多くの人々に愛されています。特に「女神像公園」は、ダムの雄大な景色を楽しめる場所として知られています。この公園には、ダム建設の際に犠牲となった105名のための慰霊塔もあり、訪れる人々に深い感慨を与えます。

さらに、上椎葉ダムでは毎年11月に観光放流が行われ、多くの観光客がその迫力に魅了されます。観光放流の際には、ダムの堤上を車で走ることができるため、ダムの壮大さを間近で感じることができます。また、自転車でのサイクリングも可能で、爽やかな風を感じながらダム周辺を巡ることができます。

アクセス情報

上椎葉ダムへは、高千穂町方面から国道265号を、日向市方面からは国道327号を利用してアクセスできますが、両国道とも道が狭く、災害時には通行止めになることがあるため、運転には注意が必要です。国道327号は一部区間を除いて整備が進んでおり、安全に通行できます。公共交通機関を利用する場合、宮崎交通バスで日向バスセンターから椎葉村行きのバスが運行しており、所要時間は約2時間30分です。

まとめ

日向椎葉湖と上椎葉ダムは、宮崎県北部の美しい自然と豊かな歴史に彩られた観光地です。吉川英治の命名による湖と、日本初の大規模アーチ式ダムは、訪れる人々に感動を与える魅力的な場所です。釣りやアウトドア、歴史的観光スポットとして、ぜひ訪れてみてはいかがでしょうか。

Information

名称
日向椎葉湖
(ひゅうがしいばこ)

高千穂・延岡・日向

宮崎県